陸奥湾の湾口部に位置する脇野沢(わきのさわ)地区
は、絶えず動く海流の出入口になっています。
このため、イワシやタラといった多くの回遊魚が季
節ごとに集まり、漁業が盛んな地域となっています。
良好な漁場が築かれる背景には、海を大切にする意
識がひときわ高い脇野沢の地域性も関係しています。
その意識を育んだのは、海底火山の噴火でできた鯛
島の伝説でした。海流がもたらし、伝説が守る、海
の豊かさを感じられるエリアです。

鯛島

鯛島を含む脇野沢の基盤となる岩
体は、約1200万年前の海底火山の
噴火でできました。その証拠とし
て、海底火山が噴火した場所でみ
られる枕状溶岩やハイアロクラス
タイト(水冷破砕岩)が、鯛島で
観察できます。巨大な岩体が長い
時間かけて波浪で削られ、現在の
鯛のような形に至りました。

マダラ漁

陸奥湾は平均水深38m、最深部で
も70mの浅海です。また、入口が
狭い湾のため静穏で、産卵や稚魚
の成育に適した環境が広がってい
ます。陸奥湾を循環する冷たい水
を辿って来遊し、産卵を行うマダ
ラは脇野沢の特産となっています。

悲恋伝説が育む海域

この地域には、征夷大将軍の坂上
田村麻呂と恋に落ちた脇野沢の娘
の悲恋伝説が伝わっています。
鯛島周辺に生える海藻は、田村麻
呂に置き去りにされ、死んでしま
った娘の髪とされており、漁師が
採ることはありません。これによ
って、海藻が豊かな海域となった
ことが、マダラが産卵するための
好条件の1つとなっています。